この記事の要点
2016年、私は13サイトのメディアを同時に立ち上げ、1年で全サイトを月1万PV以上、最大で月間300万PV規模まで伸ばしました。量を積めば勝てた時代です。2026年の今、同じやり方は通用しません。ただし「AIが書いた記事は人に勝てない」という結論も誤りだと考えています。勝敗を分けているのは生成の手段ではなく、その前段の設計です。当時の実体験と、AI時代に持ち越せるものを整理します。
「AIで書いた記事は、結局Googleに評価されない」——この一年、そうした話を何度も耳にしました。生成AIで記事を作る事業者が急増した反動として、原点回帰、つまり「やはり人が書かなければ意味がない」という論調が強まっています。手を抜いている、という言い方をされることも少なくありません。
私はその意見に賛成できません。理由は単純で、AIで作られたとしか思えないメディアが、実際に数ヶ月で検索上位に浮上してくる場面を目にしているからです。そしてもうひとつ、私自身が2016年に「人力で記事を量産する」というやり方を極端なところまでやり切った経験を持っているからでもあります。あの物量戦で何が効いて何が無駄だったのかを知っている立場から見ると、今のAI批判は論点がずれているように感じられます。
この記事は、SEOのハウツーではありません。10年前に一人で13サイトを回していた頃の実際の話と、そこから見えた「時代が変わっても変わらないもの」についての記録です。手元の数字と、実際にやったこと、そして今なら絶対にやらないことまで、できるだけ具体的に書いていきます。
2016年、Webメディアに参入したときの検索エンジンは何が違ったのか
私がWebメディアの世界に入ったのは2016年です。今から振り返ると、検索という仕組みが最も大きく揺れた年のひとつでした。そしてその揺れの真っ只中で、まだ「記事を積めば伸びる」という手法が確実に機能していた、最後の時期でもあったと思います。
WELQ問題が起きた年に、私はメディアを始めた
2016年末、医療・健康情報を扱う大手キュレーションメディアが、記事の信頼性を問題視されて非公開になりました。いわゆるWELQ問題です。ここから業界全体で「誰が書いたのか」「その情報の根拠はどこにあるのか」が問われるようになり、Googleも医療・健康分野の検索結果に大きな調整を入れました。
ただ、当時の実感として言えば、この出来事が業界の全領域に即座に波及したわけではありませんでした。健康や金融といった、人の生命や財産に直結する分野の基準は確かに厳しくなりました。しかし、そこから外れた一般的な業界の検索結果では、依然として「情報量が多いサイトが強い」という構図が残っていたのです。私が入っていったのは、まさにその外側の領域でした。
記事を積むだけで、ロングテールが取れた
当時のSEOで最も効率が良かったのは、検索ボリュームの小さいキーワードを、数で押さえていく戦い方でした。月に10回しか検索されないキーワードでも、それを300本積めば無視できない数字になります。しかもそうしたキーワードには競合がほとんどおらず、記事を公開してから数週間で1ページ目に入ることが珍しくありませんでした。
今のように「網羅性」「独自性」「体験の有無」といった観点で厳しく選別される感覚は、まだ薄かったのです。一定の水準を満たした記事を、決まった構造で、決まったペースで積む。それだけで数字が動く時代でした。だからこそ、勝負を分けるのは知識よりも作業量になっていたと言えます。
サイトマップとインデックスは「知っている人だけの技術」だった
もうひとつ、今との決定的な違いがあります。それは、XMLサイトマップをSearch Consoleに送信することや、インデックス状況を確認するといった基本動作が、まだ広く知られていなかったことです。
現在なら、Web制作会社に依頼すれば当然のように設定されますし、WordPressのプラグインが自動でやってくれます。しかし当時は、記事を書いてもクロールされないまま放置されているサイトが山のようにありました。逆に言えば、インデックスを能動的に管理できるだけで、同じ記事数でも数ヶ月分の差がついたということです。今でこそ当たり前になった作業が、当時は確かな優位性でした。
セクションのまとめ:2016年は、記事の量とインデックス管理の知識が、そのまま検索結果での優位性に変換された時代でした。裏を返せば、両方が一般化した今、同じ土俵で戦っても差はつきません。
選んだのは「一つの業界を深掘りするバーティカルメディア」だった
13サイトを立ち上げるにあたって、私が採った方針は明確でした。総合的な情報サイトを作るのではなく、一つの業界だけを徹底的に掘り下げる、いわゆるバーティカルメディアの形にすることです。この判断が、結果的に最も効きました。
総合メディアではなく、なぜ一業界だったのか
理由は3つあります。第一に、扱う範囲が狭いほど、少ない記事数でもサイト全体としての専門性が立ち上がるからです。第二に、記事同士の関連性が高いため、内部リンクが自然につながり、サイト内の回遊が生まれます。第三に、これが最も大きいのですが、狭い業界には競合がいませんでした。
当時私が担当したのは、正直に言えばそれまでまったく知らない業界でした。名前は聞いたことがある程度で、業界の構造も、そこで働く人が何に困っているのかも分かっていません。しかし調べていくうちに、そのこと自体が好条件だと気づきます。自分が知らないということは、ネット上に情報がないということでもあったからです。
「情報が薄い業界」は、そのまま「競合がいない検索結果」だった
実際にその業界のキーワードで検索してみると、出てくるのは業者のコーポレートサイトが数件と、最低限のことしか書かれていないページばかりでした。ユーザーが本当に知りたいであろうことに、誰も答えていない状態です。
この構造は、今の中小企業のWeb集客にもそのまま当てはまります。大手が押さえている一般的なキーワードで正面から戦う必要はありません。自社が扱う領域を細かく分解していけば、必ず「誰も丁寧に答えていない問い」が残っています。範囲を狭めることは、諦めることではなく、勝てる場所を選ぶことです。
深さは、やがて指名検索に変わっていった
一つの業界を掘り続けていると、あるところから性質が変わってきます。個別のキーワードで流入するだけでなく、サイト名で直接検索されるようになるのです。業界内で「あそこを見れば分かる」という位置を取れると、検索エンジンのアルゴリズムが変わっても揺れにくくなります。
後で触れますが、10年経った今も残っている3サイトは、いずれもこの段階まで到達したサイトでした。逆に、キーワード流入だけで成り立っていたサイトは、時間の経過とともに落ちていきました。
セクションのまとめ:範囲を狭めるほど、少ない記事数で専門性が立ち上がり、競合の少ない検索結果を狙えます。この「バーティカルの発想」は、AI時代の今のほうがむしろ重要になっています。
何も知らない業界で、記事の中身をどう作ったか
問題は、自分が何も知らない業界について、どうやって読む価値のある記事を書くかです。ネット上に情報がないということは、調べ物だけでは記事が作れないということでもあります。
知らないから、業者に取材しに行った
結論から言えば、業界の事業者に直接会って話を聞くことにしました。取材です。何を扱っているのか、どういう流れで仕事が来るのか、お客さんからよく聞かれることは何か、逆に説明するのに苦労することは何か。そうした話を聞いて回りました。
これが決定的でした。取材で得た内容は、その時点でネット上のどこにも存在しない情報です。検索結果を見て書いた記事は、どこかにある情報の並べ替えにしかなりませんが、取材で得た話は最初から独自の内容になります。しかも、事業者が「お客さんによく聞かれる」と言ったことは、そのまま検索されている問いでもありました。キーワードツールの数字を眺めるよりも、はるかに正確に読者の関心を捉えられたのです。
さらに副次的な効果として、取材した事業者との関係ができ、記事の監修や情報提供を継続的に受けられるようになりました。サイトの信頼性という観点でも、これは大きな資産になりました。
時事ネタと業界を掛け合わせて、リーチを広げた
もうひとつやっていたのが、その時々の話題と業界を結びつけた記事の作成です。世の中で話題になっている出来事に対して、自分たちの業界から見るとどうなのかという角度で記事を作ると、普段その業界に関心のない層にも届きます。
正直に言えば、かなり強引な紐付けをしたものもありました。それでも当時は、話題性のあるキーワードは競合が準備する前に検索結果に載せられれば取れましたし、SNSでの拡散も期待できました。サイトの立ち上がり初期に外部からの流入を作るという意味では、確かに機能した手法です。
ただし、この手法は今なら勧めません
注意
時事ネタと自社の事業を無理に結びつける記事は、現在の検索評価とは相性が良くありません。サイト全体のテーマから外れた記事が増えると、そのサイトが何の専門なのかが曖昧になります。一時的な流入は取れても、専門性という長期の資産を削ることになりかねません。当時それが通用したのは、評価の軸が今より単純だったからにすぎないと考えています。
私自身、あの手法で稼いだアクセスの多くは一過性のもので、問い合わせにはほとんどつながりませんでした。数字は動いても、事業には効かなかったということです。当時の自分に一言だけ助言できるなら、その時間を取材にもう1本回せ、と言うと思います。
セクションのまとめ:知らない業界でも、事業者に直接聞けば独自の情報が手に入ります。一方、時事ネタとの強引な紐付けは一時的な数字にしかならず、サイトの専門性を薄めるため現在では推奨できません。
13サイト同時運用と、1年後に残った数字
ここからは、実際の作業量と結果の話です。数字だけを見ると極端に映るかもしれませんが、内訳まで含めて書いておきます。
1日の作業は「取材メモ・構成・執筆」の3層だった
13サイトを同時に走らせていたと言うと、それぞれに編集部があるように聞こえるかもしれませんが、実際には私一人で回していました。当然、1サイトあたりにかけられる時間は限られます。そこで作業を分解し、日ごとに層を分けて処理していました。
具体的には、取材で得た内容を素材としてメモに落とす層、キーワードから記事の構成を組み立てる層、そして実際に本文を書く層の3つです。この分け方が重要で、頭の使い方がまったく違う作業を混ぜないことで、一日の処理量が大きく変わりました。今のAI活用でも同じことが言えますが、当時はそれをすべて手作業でやっていました。
最も書いた日で7万文字という数字の中身
最も書いた日で、1日に7万文字を書いたことがあります。ただ、この数字だけを取り出すと誤解を招くので、内訳を書いておきます。
7万文字のすべてが、公開される記事の本文だったわけではありません。取材音源から起こしたメモ、記事の構成案、複数サイト分の下書き、そして本文。これらを合わせた総量です。また、これは毎日ではなく、締め切りが重なった時期のピークの記録です。平均すれば、その半分から3分の1程度でした。
それでも、生成AIが存在しない時代に一人でこの量を処理していたことは事実です。そして今、この作業のうち「メモの整理」「構成の骨組み」「下書き」の部分は、AIが数分で片付けます。私が1年かけてやったことの物理的な部分は、現在なら圧倒的に短い時間で再現できるということです。だからこそ、物量そのものはもう差別化にならないと断言できます。
1年後、13サイトすべてが月1万PVを超えた
1年を経過した時点で、13サイトのすべてが最低でも月1万PVに到達しました。そして最も伸びたサイトは、月間300万PV規模まで成長しています。この差は、業界の市場規模と検索需要の大きさによるものです。同じ手法を同じ密度でやっても、扱う領域によって天井は10倍以上変わるということでもあります。
10年後に残ったのは3サイトだった
そして今、10年近く経った時点で稼働しているのは3サイトです。いずれも業界内で一定の地位を保っています。残ったサイトと消えたサイトの違いは、振り返ってみると明確でした。
| 観点 | 残った3サイトに共通していたこと |
|---|---|
| 情報の出どころ | 取材で得た一次情報が記事の中心にあり、他サイトの言い換えではなかった。 |
| テーマの一貫性 | 扱う範囲を最後まで広げなかった。時事ネタに流れたサイトは、専門性が薄まって落ちた。 |
| 流入の構造 | キーワード流入だけでなく、サイト名での指名検索とリピート訪問が生まれていた。 |
| 業界との関係 | 事業者との継続的なつながりがあり、情報が自然に集まる状態になっていた。 |
逆に消えていったサイトは、記事数こそ多かったものの、その中身が「検索して集めた情報の再構成」で成り立っていました。当時はそれでも順位が取れたのですが、時間の経過とともに、より詳しいサイトに置き換えられていったということです。
セクションのまとめ:1年で13サイトすべてを月1万PV以上に伸ばせましたが、10年後に残ったのは一次情報とテーマの一貫性を守った3サイトだけでした。量で作った順位は、量では守れません。
2026年、同じやり方が通用しなくなった3つの理由
では、同じことを今からやったらどうなるか。結論は明快で、まず伸びません。理由は3つあります。
コンテンツマーケティングが当たり前になった
第一に、多くの企業がすでに記事を出しています。2016年の時点では、自社サイトでコラムを継続的に更新している中小企業はごく一部でした。今は、業種を問わず何らかの形で情報発信をしているのが標準です。つまり、かつて「誰も答えていなかった問い」の多くには、すでに誰かが答えています。
AIによって、供給量が需要を大きく超えた
第二に、生成AIの普及によって、記事を作るコストが劇的に下がりました。私が1年かけて積んだ記事数を、今なら数週間で用意できる事業者が無数にいます。供給が需要を超えると何が起きるかというと、検索結果の1ページ目に入れる枠の競争率だけが上がります。作れる量が増えても、表示される枠は増えないからです。
コンテンツの消費速度が上がり、賞味期限が短くなった
第三に、読み手側の消費速度が上がりました。SNSやAI検索を経由して情報に触れる機会が増え、一つの記事に留まる時間は短くなっています。加えて、公開した記事が「最新の情報」であり続ける期間そのものが短縮されました。書いて放置しておけば数年間流入を生み続けた時代とは、資産としての持ちが違います。
セクションのまとめ:発信する企業が増え、AIで供給量が跳ね上がり、記事の賞味期限が短くなりました。量を積むという戦い方は、前提条件そのものが失われています。
「AIの記事は人に勝てない」は本当か
ここまでの話をすると、「だからやはり人が丁寧に書くしかない」という結論に向かいがちです。実際、業界ではその方向の議論が主流になりつつあります。しかし私は、そこに違和感があります。
原点回帰の議論が広がっている
「AIが書いた記事は当たり障りがなく、読んでも何も残らない」「Googleは結局、人が書いたものを評価する」——こうした主張は、一定の説得力を持って語られています。そして、AIを使っていると聞いた瞬間に「手を抜いている」と受け取る人は、現時点でも多数派だと感じます。
この受け止め方自体は理解できます。実際、AIに丸投げして出力をそのまま公開した記事は、内容が薄く、事実の誤りも混ざり、読む価値がほとんどありません。そういうものが大量に出回ったことで、AI生成そのものへの評価が下がったという流れです。
それでも、AI生成と思われるメディアが上位に来ている
一方で、私が実際に観測している事実があります。ある制作会社が運営していると思われるメディアが、公開から数ヶ月という短い期間で、競合の多いキーワードで上位に浮上してきているのです。記事の量と更新速度、文体の均質さから見て、生成AIを中心に制作されている可能性が高いと考えています。
注意
このメディアがAIで制作されているという点は、あくまで外形からの推測であり、確認は取れていません。断定するものではありません。ここで重要なのは制作手段の特定ではなく、「短期間で大量の記事を公開したサイトが上位に来ている」という観測可能な事実のほうです。
勝敗を分けているのは、生成ではなく設計
そのメディアの記事を実際に読んでみると、文章そのものは決して名文ではありません。しかし、キーワードに対する答えが冒頭にあり、必要な情報が抜けなく並び、読み手が次に知りたいことが順番に配置されています。つまり、構成が正確なのです。
ここから言えることは、はっきりしています。検索エンジンが評価しているのは「誰が書いたか」ではなく「読み手の問いに、過不足なく答えているか」です。AIで生成したという事実そのものは、マイナス要因ではありません。Google自身も、AI利用を理由に評価を下げるとは述べておらず、問うているのは中身の有用性です。
「AIだから勝てない」のではなく、「設計せずに生成しただけだから勝てない」。この2つはまったく別の話です。そして、設計されたAI記事は、設計されていない人力記事に普通に勝ちます。私が2016年に量産していた記事の多くも、今の基準で見れば設計の甘い記事でした。人が書いたから残ったわけではないのです。
セクションのまとめ:AI生成であること自体は不利ではありません。上位に来ているAI活用メディアは、構成と情報の配置が正確です。差が生まれているのは生成の手段ではなく、その前段の設計です。
2016年の量産から、AI時代に持ち越せるもの
10年前の物量戦で私が実際にやっていたことのうち、機械に置き換えられた部分と、今も人にしかできない部分があります。後者だけを取り出すと、次の4つに整理できます。
① テーマを絞る——バーティカルの発想は今こそ効く
供給量が増えた今、扱う範囲を広げるほど埋没します。逆に、範囲を狭めれば、その領域で最も詳しいサイトになる難易度は下がります。中小企業であれば、業種と地域、あるいは特定の悩みまで絞り込んで構いません。「Web集客」ではなく「地方の工務店が問い合わせを増やす方法」まで降りる、といった具合です。この判断は、AIには代われません。自社がどこで一番になるかを決めるのは、経営の判断だからです。
② 一次情報を持つ——AIが持てない唯一の資産
私が2016年にやった取材は、今でもそのまま有効です。むしろ価値は上がっています。AIが出力できるのは、すでにどこかに存在する情報の再構成だけです。自社が実際に受けた問い合わせの内容、施工現場で起きたトラブル、お客様が最初に聞いてくる質問——こうした情報は、社内にしかありません。
そして、これを集める作業は難しくありません。営業担当や現場のスタッフに「最近よく聞かれることは何か」を尋ねて、月に一度メモを取る。それだけで、AIには絶対に書けない記事の材料になります。取材相手が社外である必要すらないのです。
③ 構成を設計する——上位表示の実質はここにある
前章で触れたとおり、上位に来ているAI活用メディアの強みは構成の正確さでした。検索した人が何に困っていて、どういう順番で答えを受け取りたいのかを組み立てる作業です。
AIに構成案を出させること自体は可能ですが、そのまま使うと一般的な並びにしかなりません。自社の顧客が実際にどこでつまずくのかを知っている人が手を入れることで、はじめて他社と違う記事になります。実務としては、AIに構成案を3パターン出させ、そこから自社の実感に合う順番へ組み替えるのが現実的です。
④ インデックスを管理する——地味だが確実に効く
10年前に優位性だったこの作業は、今では当たり前になりました。しかし当たり前になったからこそ、やっていないサイトは確実に負けます。Search Consoleで公開した記事がインデックスされているか、どのキーワードで表示されているかを月に一度確認する。この習慣があるかないかで、同じ記事数でも結果は変わります。
ポイント
この4つのうち、AIが代替できるのは③の「構成案の叩き台を出す」部分だけです。①②④は依然として人の仕事として残ります。逆に言えば、本文を書く作業をAIに任せて浮いた時間を①②④に回せば、10年前より圧倒的に有利な条件で戦えるということでもあります。
セクションのまとめ:テーマの絞り込み、一次情報の確保、構成設計、インデックス管理。この4つは2016年も2026年も変わりません。AIで浮いた時間をここに投じられるかが分かれ目です。
AIをベースに考える——そろばんと表計算の話
最後に、私がこの数年でたどり着いた考え方を書いておきます。少し飛躍のある比喩ですが、実感としてはこれが最も近いと感じています。
検算のために電卓を叩き続けた人たち
表計算ソフトが業務に入ってきた頃、「入力ミスがあるかもしれないから」と、最後に必ず電卓やそろばんで検算する人たちがいました。その姿勢自体は誠実です。実際、初期には計算式の設定ミスもあったでしょう。
しかし数年が経つと、そのやり方は成立しなくなりました。検算する人は、しない人の数分の一の量しか処理できません。そして表計算ソフトの精度が上がるにつれ、検算にかけていた時間は純粋な機会損失に変わりました。最終的に生き残ったのは、ソフトの出力を前提として、その上で何を分析するかを考えた人たちです。
AI生成は「最低ライン」であって、「完成品」ではない
今のAIと記事制作の関係は、これとよく似ています。AIが出力したものを疑い、結局すべて自分で書き直すという運用は、誠実ではありますが持続しません。一方で、AIの出力をそのまま公開するのも論外です。
私の立場は、その中間ではなく別の場所にあります。AIが出力するものは、成果物の「最低ライン」だと考えるべきです。白紙から始めるのではなく、そこそこの水準のものがすでにある状態から仕事を始める。そして、そこに何を足すかで勝負する。これがこれから当たり前になる働き方だと考えています。
この考え方に立つと、評価の基準が変わります。「AIを使ったかどうか」ではなく、「AIが出せる水準を、どれだけ超えたか」が問われるようになるということです。AIでそこそこの記事が誰にでも書ける以上、そこそこの記事に価値はありません。
AIに任せない領域を、先に決めておく
ただし、これは何でもAIに任せるという話ではありません。半自動化という言い方が正確で、任せる領域と任せない領域を先に線引きしておくことが前提になります。
| 工程 | 担当 |
|---|---|
| 情報収集・下調べ | AIに任せてよい。ただし出てきた数字と固有名詞は必ず一次情報で照合する。 |
| 構成案の叩き台 | AIに任せてよい。複数案を出させ、採用と組み替えは人が行う。 |
| 本文の下書き | AIに任せてよい。見出し単位で出させると精度が安定する。 |
| 一次情報の追記 | 人が行う。自社の事例・現場の声・実際の数字は、ここでしか入らない。 |
| 事実確認と最終判断 | 人が行う。公開の可否を機械に委ねない。責任の所在を曖昧にしない。 |
| 顧客情報の取り扱い | AIに入力しない。個人情報や取引先の非公開情報を生成AIに渡さない運用を先に決める。 |
この線引きさえ守れば、AIの利用は品質を落としません。むしろ、下書きにかけていた時間を一次情報の収集に回せる分、記事の中身は濃くなります。10年前の私が喉から手が出るほど欲しかったのは、まさにこの時間でした。
セクションのまとめ:AIの出力は完成品ではなく最低ラインです。そこから何を足せるかが問われます。ただし事実確認・一次情報・最終判断・顧客情報の扱いは人の領域として明確に残しておく必要があります。
やってはいけない5つのこと
ここまでの話を踏まえて、私自身が過去にやってしまったことも含め、避けるべき進め方を5つ挙げておきます。
1. AIの出力を、検証せずにそのまま公開する
最も多く、最も損害が大きい失敗です。生成AIは、もっともらしい誤りを自然な文章で出力します。数字、法令、料金相場、固有名詞の4つは、必ず一次情報で確認してから公開してください。一度でも誤情報を出すと、その記事だけでなくサイト全体の信頼が下がります。
2. 一次情報ゼロのまま、記事数だけを増やす
2016年ならこれで伸びました。今は伸びません。どこにでもある情報を再構成した記事を100本積んでも、上位に来ている競合1本には届きません。記事数を増やす前に、自社にしかない情報を10個書き出すほうが先です。
3. 話題性のあるテーマと、自社の事業を無理に結びつける
私が実際にやって、結果的に無駄だったやり方です。一時的なアクセスは取れますが、問い合わせにはつながらず、サイトのテーマが何なのかを曖昧にします。専門性という長期資産を、短期の数字と交換していることになります。
4. インデックス状況を見ないまま、記事だけを増やし続ける
公開した記事が検索エンジンに認識されていなければ、どれだけ書いても存在しないのと同じです。書く量を増やす前に、すでに公開した記事がどう扱われているかを確認してください。伸びない原因が中身ではなく設定にある、という事例は今でも珍しくありません。
5. AIを「安く作れる理由」として顧客に説明する
これは制作を依頼する側にも、受ける側にも関わる話です。AIを使っていることを値引きの根拠として持ち出すと、成果物の価値そのものが安く見積もられます。AIは価格を下げるための道具ではなく、同じ時間でより深いところまで到達するための道具です。伝えるべきは、浮いた時間で何をしたかのほうです。
セクションのまとめ:無検証の公開、一次情報ゼロの量産、話題性への安易な便乗、インデックスの放置、そしてAIを安さの理由にすること。この5つを避けるだけで、多くの遠回りを回避できます。
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- コンテンツSEOとは|検索意図・トピッククラスタ・記事の品質基準を中小企業向けに解説 — 上位に来る記事の「構成設計」を、検索意図の分解から体系的に整理しています。
- オウンドメディアとは|中小企業が失敗せずに立ち上げるための設計と運用 — メディアをゼロから立ち上げる際の全体像と、続けるための運用体制をまとめています。
よくある質問
Q. AIで書いた記事でも、検索順位は上がりますか?
上がります。GoogleはAIの利用そのものを理由に評価を下げるとは述べておらず、問われているのは中身が読み手の役に立つかどうかです。実際に、AIを中心に制作されたと思われるメディアが数ヶ月で上位に来ている例もあります。ただし、生成した文章をそのまま公開しただけの記事は評価されません。構成の設計と、自社にしかない情報の追記が前提になります。
Q. AIで記事を量産すれば、2016年のように成果が出ますか?
出ません。2016年に量が効いたのは、記事を出す事業者が少なく供給が薄かったからです。現在は誰でも短期間に大量の記事を出せるため、量そのものは優位性になりません。記事数を増やす前に、扱うテーマを狭く絞り込み、自社にしかない一次情報を確保するほうが結果につながります。
Q. AIを使っていることは、公開すべきでしょうか?
隠す必要はありませんが、あえて強調する必要もありません。読み手が知りたいのは制作手段ではなく内容だからです。ただし、AIを使っていることを制作費が安い理由として説明するのは避けたほうがよいと考えられます。成果物の価値まで安く見積もられる原因になります。
Q. 中小企業が記事を始めるなら、何本くらい必要ですか?
本数よりも範囲の狭さが先です。扱う領域を業種と地域、あるいは特定の悩みまで絞り込めば、20本から30本でもその領域で最も詳しいサイトになれる可能性があります。逆に範囲を広げたまま100本書いても埋没します。まず1本を、社内の一次情報を入れて丁寧に仕上げるところから始めるのが現実的です。
Q. AIに任せてはいけない作業は何ですか?
事実確認と最終判断、そして一次情報の追記の3つです。数字・法令・料金相場・固有名詞は必ず人が一次情報で照合してください。加えて、個人情報や取引先の非公開情報を生成AIに入力しない運用ルールを、使い始める前に決めておく必要があります。
まとめ:AIが書けるものは、もう成果物ではなく出発点になった
10年分の話を、改めて整理しておきます。
- 2016年は、記事の量とインデックス管理の知識がそのまま優位性になった。13サイトを1年で全て月1万PV以上、最大で月間300万PV規模まで伸ばせたのはその時代だったから
- 10年後に残った3サイトの共通点は、一次情報が中心にあり、テーマを最後まで広げず、指名検索が生まれていたこと
- 2026年は、発信する企業が増え、AIで供給量が跳ね上がり、記事の賞味期限も短くなった。量で戦う前提条件は失われている
- 「AI記事は人に勝てない」は誤りで、設計されたAI記事は設計されていない人力記事に普通に勝つ。差が出るのは生成ではなく構成
- 時代が変わっても残るのは、テーマの絞り込み・一次情報・構成設計・インデックス管理の4つ
- AIの出力は完成品ではなく最低ライン。そこから何を足せるかが問われる時代になった
- ただし事実確認、最終判断、顧客情報の取り扱いは人の領域として明確に線を引いておく
表計算ソフトを疑って電卓で検算し続けた人たちは、誠実でしたが、残りませんでした。残ったのは、その出力を前提として、その先で何を考えるかに時間を使った人たちです。AIと記事制作の関係も、同じ道をたどると私は考えています。
AIでそこそこの記事が誰にでも作れるようになった以上、そこそこの記事に価値はありません。問われるのは、そこから何を足すかです。自社の現場にしかない話、実際に受けた問い合わせ、うまくいかなかった事例。それらはAIが決して持てないものであり、10年前に私が足を運んで集めていたものと、本質的には何も変わっていません。
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この記事の執筆
webcan.jp編集部 Webディレクター・SEOコンサルタントとして10年以上の現場経験を持ち、大手金融系メディアや医療系コーポレートサイトのコンテンツマーケティング支援、ECサイトの企画運営・KPI設計、月商数百万円から月商1億円規模への成長支援などに携わってきました。
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AIを記事制作に取り入れたいものの、自社のどこから手をつけるべきか迷ったら、サイトの現状を診断するシンプルな相談窓口を用意しています。費用はかかりません。無料SEO診断のお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

