この記事の要点
ホームページの写真やイラストについて請求書や警告メールが届いたら、最初にすることは「払わない、すぐ返信しない、画面を保存する」の3つです。次に、相手の請求の根拠と、自社の画像の入手経路を確かめます。そのうえで、弁護士などの専門家に相談して方針を決めます。慌てて払うことも、無視することも勧められません。この記事では、その順番と、担当者に渡せる点検表をまとめます。
ホームページを長く運用していると、「この写真はどこから持ってきたのだろう」と分からなくなる画像が出てきます。担当者が替わったり、制作会社を変えたりするたびに、画像の出どころの記録は薄れていきます。そこへ突然、見知らぬ相手から「無断で使われている」という連絡が届くと、驚かれる社長も少なくありません。
結論を先にお伝えします。請求が届いても、その場で支払う必要があるかどうかは決まっていません。相手の主張が正しいのか、金額が妥当なのか、そもそも本物の権利者なのかを、順に確かめてから判断します。この確認の作業は、社長ご自身ではなく、担当者と専門家に任せる形が現実的です。
なお、この記事は一般的な情報の整理であり、個別の事案についての法的助言ではありません。法令の条文や運用は改正されることがあります。実際に請求が届いた場合の最終判断は、必ず弁護士などの専門家にご相談ください。
この記事の読み方
| 読者の状況 | 読む場所 |
|---|---|
| 今まさに請求・警告メールが届いた | 「請求書が届いたときの最初の対応」から読んでください |
| まだ何も届いていないが不安がある | 「自社サイトで起きやすい場面」と「点検表」から読んでください |
| 担当者や制作会社に任せている | 「社長が決めること・任せること」と「外注先との契約」を読んでください |
ホームページの画像の著作権|まず押さえる基本の考え方
著作権の話は難しく聞こえますが、社長が知っておく基本は多くありません。ここでは、請求が届いたときに判断の土台になる4つの考え方だけを整理します。
著作権は「作った瞬間」に生まれる
写真やイラストなどの著作物には、作った人に著作権が生まれます。この権利は、特別な届け出や登録をしなくても、作ったときから発生する仕組みです。著作権法の第17条に、そうした考え方(方式を必要としない)が定められています。
つまり、「著作権表示(©マーク)が付いていないから自由に使える」とは言えません。インターネット上で見つけた画像も、多くの場合は誰かが作った著作物です。見た目に注意書きがなくても、権利者がいると考えて扱うのが安全です。
ホームページに載せる行為は複数の権利に関わる
他人の画像を自社サイトに載せる行為は、主に次の権利に関わります。条文の番号は、確認の入口として覚えておくと便利です。
| 権利 | 条文 | ホームページでの場面 |
|---|---|---|
| 複製権 | 著作権法 第21条 | 画像を保存してコピーする、自社のサーバーに置く |
| 公衆送信権 | 著作権法 第23条 | 画像をインターネット上で誰でも見られる状態にする |
| 翻案権 | 著作権法 第27条 | 画像を加工して作り替える、イラストを描き写す |
| 氏名表示権・同一性保持権 | 著作権法 第19条・第20条 | 作者名を消す、無断で切り抜く・色を変える |
「載せただけ」「少し加工しただけ」でも、権利者の許可がなければ問題になり得ます。特に、ホームページへの掲載は誰でも見られる状態にする行為にあたるため、公衆送信権が関わる点が重要です。
「引用」で使えることもあるが、条件は厳しい
他人の著作物を使える例外として、著作権法の第32条に「引用」があります。公正な慣行に合致し、引用の目的上、正当な範囲内で行うことが条件とされています。文化庁も、著作物が自由に使える場合の一つとして案内しています。
ただし、写真の見栄えを良くするための飾りとして載せる使い方は、一般に引用とは考えにくいと言われます。引用なら安全と思い込まず、本文との主従関係や出典の明示など、条件を満たしているかを個別に見る必要があります。判断に迷う場合は、専門家に確認する領域です。
権利は著作権だけではない
写真に人が写っている場合は、著作権とは別に、写った人の肖像(顔や姿)に関する権利が問題になります。肖像権は、著作権法の条文ではなく、人格権として判例で認められてきた考え方です。従業員やお客様の写真を載せるときは、撮影者の権利と、写った人の同意の両方を見ておく必要があります。
商品の写真や、他社のロゴ・キャラクターの画像にも、別の権利が関わることがあります。この記事では著作権を中心に扱いますが、「写っているものの権利」も忘れずに点検表へ入れておきます。
ポイント
「画像のデータが手元にある」ことと「ホームページに使ってよい」ことは別です。使ってよい根拠を、あとから説明できる形で残しているかどうかが、いちばんの分かれ目になります。
セクションのまとめ:著作権は作った時点で生まれ、掲載は複製や公衆送信にあたります。データがあることは根拠になりません。
自社サイトで画像の権利問題が起きやすい8つの場面
問題は、悪意がなくても起きます。多くは「知らなかった」「前の担当者がやった」という形です。起きやすい場面を表で確認し、自社に当てはまるものがないか見てみましょう。
| 場面 | 起きやすい理由 | 確認の方向 |
|---|---|---|
| ネットで見つけた画像を保存して使った | 「フリー」と書かれているように見えて、実際は条件付きのことがある | 提供元の利用規約を読み直す |
| 制作会社が用意した画像 | 納品時に画像の出どころが共有されないことがある | 制作会社に出どころの確認を依頼する |
| 有料素材サイトの画像 | 購入しても、使える範囲(媒体・期間・改変)に制限があることがある | ライセンス条件を保存して照合する |
| スタッフが撮影した写真 | 撮影者と会社の取り決めがなく、後から扱いが分からなくなる | 社内の取り決めを文書で残す |
| 従業員・お客様が写る写真 | 同意の記録がなく、退職後にトラブルになることがある | 掲載の同意を書面やメールで残す |
| イラスト・アイコン | 「自由に使える」と案内する素材でも、商用不可の場合がある | 利用条件の商用可否を確認する |
| AIで作った画像 | 既存の作品に似てしまう可能性がある | 作成記録と類似の有無を確認する |
| 古い記事・過去の画像 | 担当者が替わり、出どころを誰も覚えていない | 古い画像から点検し、不明なものは差し替える |
「フリー素材」という言葉に注意する
「フリー素材」には、料金がかからないという意味と、何をしても自由という意味が混ざって使われています。実際には、無料でも商用利用は不可、改変は禁止、作者名の表示が必要、といった条件が付くことが多くあります。
クリエイティブ・コモンズ(作者が使い方の条件を示すための国際的な許諾の仕組み)のライセンスも、条件の種類は複数あります。表示、非営利、改変禁止などの組み合わせで、使える範囲が変わります。マークの意味を確かめずに使うと、条件違反になることがあります。
制作会社に任せた画像も、気づかぬうちに社長の責任になり得る
制作会社が用意した画像だから大丈夫、と考えたくなる場面です。しかし、公開しているのは自社のホームページです。権利者から見れば、掲載している会社が連絡先になります。そのうえで、制作会社にどこまで責任を求められるかは、契約の内容によって変わります。
だからこそ、契約や納品時に「画像の出どころと使用条件を一覧で渡してもらう」ことが大切になります。この点は後の章で詳しく扱います。
AIで作った画像の扱い
文化庁は、生成AIと著作権の関係について、「AIと著作権に関する考え方について」という資料を公表しています。AIが作った画像でも、既存の著作物と似ていて、それをもとにしたと言える場合には、権利侵害となり得るという整理が示されています。
AIで作ったから安全とは限りません。使うときは、作成に使った道具と指示文、できあがった日付を残しておくことをお勧めします。特に、特定の作家や作品を思わせるような指示を出すのは避けたほうが無難です。
セクションのまとめ:問題の多くは悪意ではなく、出どころが不明になることから生まれます。「フリー」の言葉を鵜呑みにしないことが肝心です。
請求書・警告メールが届いたときの最初の対応|社長がやる5つのこと
ここが本題です。届いた書面やメールの形はさまざまですが、最初の動きは共通しています。落ち着いて、順番に進めれば大丈夫です。
手順1:払わない。返信もすぐにはしない
請求書に支払期限が書かれていると、焦って振り込みたくなります。しかし、支払いは「相手の主張を認めた」と受け取られる可能性があり、あとから取り戻すのは簡単ではありません。まず払わず、内容を確かめる時間を取ります。
返信も同じです。電話で「すみません、すぐ対応します」と答えると、事実関係を確かめる前に責任を認めた形になりかねません。電話がかかってきた場合は、「担当者に確認して、改めて書面でご連絡します」と伝え、通話を終えるのが安全です。
手順2:届いたものを丸ごと保存する
メールの本文、添付ファイル、封筒、送信元のアドレス、日付を、そのまま保存します。メールは削除せず、転送もせず、画面のスクリーンショットも残します。紙の書面はコピーを取り、原本は封筒ごと保管します。
あわせて、自社のホームページで該当する画像がどう表示されているかも記録します。ページのURL、表示されている日時、画像の位置が分かる画面を保存してください。これは専門家に相談するときの基礎資料になります。
手順3:本物の請求かどうかを疑って確かめる
届いた連絡が、実在する権利者からのものとは限りません。画像の無断使用を名目にした、架空の請求や詐欺的なメールも世の中にはあります。次の点を落ち着いて見てください。
| 確認する点 | 見るべきこと |
|---|---|
| 差出人の名前と連絡先 | 会社名・住所・電話番号が具体的に書かれているか。実在するか、自分で調べられるか |
| 対象の画像の特定 | どのページのどの画像かがURLなどで示されているか |
| 権利を持つ根拠 | 自分が権利者(または代理人)であることを示す説明があるか |
| 金額の根拠 | 請求額がどう計算されたか、説明があるか |
| 支払い方法 | 個人名義の口座や、見慣れない支払い方法を指定していないか |
| 添付ファイルやリンク | 不審なファイルを開かせる、見慣れないサイトへ誘導する内容になっていないか |
添付ファイルやリンクは、中身を確かめるまで開かないことをお勧めします。メールに記載されたURLや電話番号に直接かけ直さず、相手の公式サイトなどを自分で探して連絡先を照合する方法が安全です。不審な場合は、警察の相談窓口(警察相談専用電話 #9110)でも相談できます。
注意
「本物のような書面だから正しい」とは限りません。反対に、「見知らぬ相手だから嘘だろう」と決めつけて放置するのも危険です。真偽は、専門家と一緒に確認するのが確実です。
手順4:自社の画像の入手経路をたどる
次に、請求の対象とされた画像が、自社にどう入ってきたのかを調べます。調べる順番は、新しい手がかりから古い手がかりへ、がやりやすい方法です。
- 担当者に聞く:誰が、いつ、どこから画像を取得したか
- 制作会社の納品物を見る:画像の一覧や素材の購入記録がないか
- 過去のメールをさかのぼる:素材サイトの購入履歴や領収書が残っていないか
- 画像ファイルの情報を見る:ファイル名や作成日が手がかりになることがある
- 同じ画像が他のページや資料で使われていないか確認する
入手経路が分かれば、使ってよい根拠があったのか、なかったのかが見えてきます。逆に、どうしても分からない場合は、「分からない」という事実そのものを専門家に正直に伝えます。ここで推測で話を作ると、後で食い違いが生じます。
手順5:専門家に相談してから、返信の方針を決める
ここまでの資料がそろったら、弁護士など専門家へ相談します。社長が相手と直接やりとりすると、言葉の選び方一つで立場が不利になることがあります。第三者に窓口を任せる選択もあります。
返信の内容は、おおむね次の3パターンに分かれます。どれを選ぶかは、事実関係と相手の根拠を見て、専門家と決めます。
| パターン | 考え方 |
|---|---|
| 根拠の説明を求める | 権利者であることの資料や、請求額の算出方法などを、書面で示してほしいと依頼する |
| 事実を確認して対応を提案する | 使用の事実が確認できた場合に、掲載の停止と、解決の方法を話し合う |
| 請求に応じない旨を伝える | 権利者でない、使用の事実がないなど、請求に理由がない場合に、その根拠を示して伝える |
ポイント
返信の最初の一通は、「事実と根拠を確認したい」という、確認依頼にとどめるのが一般的な考え方です。謝罪や支払いの約束は、確認が終わってからで遅くありません。
画像はすぐ消してよいか
請求を受けた画像をすぐに非表示にするかどうかは、悩ましい判断です。被害の拡大を防ぐ意味では、早めに外す方法があります。一方で、消してしまうと、掲載状況の証拠が自社側に残らなくなります。
おすすめの順番は、「画面の記録を取る、元データと入手の記録を保存する、そのあと専門家と相談のうえで非公開にする」です。非表示にしたからといって、過去の使用について責任がなくなるわけではありません。この点も含めて、専門家へ確認してください。
セクションのまとめ:払わない、すぐ返信しない、保存する。そのうえで本物かを確かめ、入手経路をたどり、専門家に相談して方針を決めます。
請求を受けたときにやってはいけない5つのこと
慌てた状態では、よかれと思った行動が裏目に出ることがあります。次の5つは、特に避けたい行動です。
| やってはいけないこと | 理由 |
|---|---|
| 1. 慌てて振り込む | 支払いが事実を認める行動と受け取られる可能性があり、取り戻しにくい |
| 2. 画像だけをこっそり消す | 記録がなくなり、状況の説明が難しくなる。「消せば終わり」でもない |
| 3. 担当者を責めて聞き取りを急ぐ | 担当者が萎縮して事実を話しにくくなり、調査が進まない |
| 4. 相手に感情的な返信をする | 文面は証拠として残る。言い過ぎが不利になることがある |
| 5. 無視して放置する | 真偽が分からないまま時間が過ぎ、対応が難しくなることがある |
特に3つ目は見落とされがちです。多くの場合、担当者は悪意なく画像を使っています。責任追及より、事実を一緒に整理する姿勢のほうが、早く正確な情報が集まります。
相手へ返信するときの文面の考え方
文面は専門家に作ってもらうのが安心ですが、考え方を知っておくと打ち合わせが早く進みます。次は、確認依頼の一例を、架空の内容で示したものです。実際に使う場合は、必ず専門家に確認してから送ってください。
確認依頼の文面例(架空・参考用)
○月○日付のご連絡を拝受いたしました。内容を社内で確認するため、次の点をご教示ください。(1)対象とされる画像の掲載ページのURL、(2)貴殿が当該画像の権利者であることを示す資料、(3)請求額の算出根拠。ご回答をいただいたうえで、事実関係を確認し、改めてご連絡いたします。
この例は、使用を認めることも否定することもしていません。事実の確認と、根拠の提示だけを求めています。このように、第一報は短く事務的にまとめるのが一般的な考え方です。
セクションのまとめ:払う・消す・責める・感情的に返す・放置する、の5つは避けます。第一報は確認依頼にとどめます。
どこに相談する?確認先と専門家の使い分け
相談先はいくつもあり、役割が違います。ここでは、社長が迷わないように、目的別に整理します。
| 相談先 | 向いていること | 注意点 |
|---|---|---|
| 弁護士(知的財産に詳しい事務所) | 請求への対応方針、返信、交渉、法的な判断 | 事務所ごとに得意分野と費用が違う。予約時に確認する |
| 地域の弁護士会・法テラス | 弁護士を探す入口、初回の相談窓口の案内 | 条件によって利用できる制度が異なる |
| 文化庁(著作権の案内ページ) | 著作権制度の基本、自由に使える場合の解説 | 個別の事案の判断や紛争の解決はしてくれない |
| 公益社団法人 著作権情報センター(CRIC) | 著作権に関する一般的な相談の案内 | 個別の紛争の代理は行わない |
| 制作会社・過去の外注先 | 画像の出どころ、納品時の素材一覧の確認 | 責任の所在は契約の内容による |
| 加入している保険の窓口 | 賠償責任保険の補償範囲の確認 | 商品によって対象や条件が違う。事故の連絡期限もある |
弁護士に相談するとき、持っていくもの
専門家に相談する時間は限られます。資料をそろえて行くと、的確な助言を受けやすくなります。次のものを一つのフォルダにまとめておくと便利です。
- 届いた書面・メールの原本と、その保存データ
- 請求の対象とされた画像の、掲載ページのURLと画面の記録
- 画像の元データ、入手経路が分かる資料(購入履歴、納品メール)
- 制作会社との契約書、見積書、納品書
- ホームページの公開日、画像を載せた時期が分かる資料
- これまでのやりとり(担当者の話のメモ)
保険を確認しておく
会社が加入している賠償責任保険の中には、他人の権利を侵害した場合の賠償や、争いになった場合の費用を対象とする商品があります。ただし、対象かどうかは保険の種類や特約の有無で異なります。事故の連絡に期限が決まっていることもあります。
請求を受けた時点で、証券を出して保険会社や代理店に「この件は対象になり得るか」を問い合わせておくと安心です。補償されるかは、その保険の約款(契約の取り決め)で決まるため、必ず自社の契約内容で確認してください。
時間の経過について
古い画像の使用でも、請求が届くことはあります。損害賠償を求める権利が、いつまで残るかについては、民法の第724条に、損害と加害者を知ったときから3年、不法行為のときから20年などの期間が定められています。
ただし、「いつから数えるか」「どの権利に当てはまるか」は事案ごとの判断が必要です。古いから安心とも、古くても必ず請求されるとも言えません。期間の見方は、専門家に確かめてください。
セクションのまとめ:相談先は目的別に使い分けます。個別の対応は弁護士、制度の基本は文化庁やCRIC、出どころは制作会社、補償は保険です。
社長が決めること・任せること|自社でやる/専門家に任せる/後でよい
請求への対応は、社長がすべてを抱える必要はありません。決めるべきことと、任せてよいことを分けると、気持ちも楽になります。
| 区分 | 内容 | 担当の目安 |
|---|---|---|
| 社長が決める | 支払うか・争うか・和解を探るかの最終方針、費用をかけてよい範囲 | 社長(専門家の助言を受けて) |
| 専門家に任せる | 相手への返信、権利者かどうかの確認、金額の妥当性の判断、交渉 | 弁護士など |
| 担当者に任せる | 画面の保存、入手経路の調査、資料の整理、対象画像のリストアップ | Web担当者・総務 |
| 制作会社に依頼する | 納品した画像の出どころと使用条件の説明 | 制作会社・外注先 |
今やること・後でよいこと
| 今やる(届いたその週) | 後でよい(落ち着いてから) |
|---|---|
| 届いた書面・メールの保存 | ホームページ全体の画像の総点検 |
| 対象ページの画面記録 | 画像の取り扱いルールの文書化 |
| 入手経路の聞き取り | 担当者向けの勉強会 |
| 保険の補償範囲の問い合わせ | 制作会社との契約書の見直し |
| 専門家への相談予約 | 画像素材の購入・撮影計画 |
右側の「後でよいこと」は、決して軽い話ではありません。ただ、最初の数日は左側に集中するほうが、混乱が少なくなります。
金額と手間の目安をどう考えるか
請求額は、画像1点でも、事案によって大きく幅があります。この記事では金額の相場は示しません。損害賠償の額は、著作権法の第114条などにある推定規定を使って考えられることはありますが、実際の金額は個別の事情で決まるためです。
社長として見ておきたいのは、支払う金額だけではありません。対応にかかる人の時間、専門家への相談費、ホームページの修正にかかる手間も含めた総額です。争うほうが高くつく場合もあれば、安易に払うと同じ連絡が増えるおそれもあります。ここは専門家と相談して、費用対効果を一緒に考える部分です。
相談の入口
画像の出どころが分からない、請求への対応を誰に頼めばよいか迷う、といった段階でもご相談いただけます。社内でできる確認と、専門家に任せる部分を、状況に合わせて整理します。法的な判断そのものは弁護士などの専門家の領域となるため、その前段の整理や、ホームページ側の修正の相談としてお使いください。
先に現状を知りたい場合は、無料診断もご利用いただけます。
セクションのまとめ:最終方針は社長、法的判断は専門家、調査は担当者に分けます。金額だけでなく手間も含めた総額で考えます。
【担当者に渡す】ホームページの画像・点検表|請求が来る前にやっておくこと
請求が届いてから調べるより、届く前に点検しておくほうが、はるかに負担が軽くなります。ここは社長が読む必要はなく、担当者にそのまま渡せる章です。
ステップ1:画像を一覧にする(画像台帳をつくる)
まず、ホームページで使っている画像を、表計算ソフトで一覧にします。全部を一度にやる必要はありません。トップページ、会社案内、商品・サービスの紹介ページ、ブログの順に、アクセスの多いところから進めます。
| 台帳の項目 | 書くこと | 例(架空) |
|---|---|---|
| ページのURL | 画像が使われているページ | (自社サイトのURL) |
| 画像の名前・場所 | ファイル名、ページ内の位置 | toppage-main.jpg(トップの大きな写真) |
| 入手経路 | 自社撮影/素材サイト/制作会社/お客様提供/その他 | 素材サイトA(購入) |
| 作者・撮影者 | 誰が作ったか | 社内の営業担当、外部カメラマンなど |
| 使用条件 | 商用可否、改変可否、作者表示の要否、期間 | 商用可・改変可・表示不要 |
| 証拠の保管場所 | 購入履歴、契約書、許可メールの保存先 | 共有フォルダ「画像証拠」 |
| 写り込み | 人物・他社ロゴ・商品の有無と同意の有無 | 従業員1名、同意書あり |
| 最終点検日 | 最後に確かめた日 | 2026年10月 |
ステップ2:「不明」を分けて、優先順位をつける
台帳をつくると、入手経路が分からない画像が必ず出てきます。これは普通のことです。分からないものを「不明」として別に色分けし、次の順で対処します。
- 不明で、よく目立つ場所に使われている画像(トップ、採用、商品ページ)
- 不明で、人物が写っている画像
- 不明で、イラストやアイコン
- 入手経路は分かるが、条件の確認ができていない画像
不明な画像は、最終的に差し替える選択肢があります。自社で撮り直す、新しく素材を購入する、画像をやめて文章と図表で見せる、のいずれかです。撮影の費用感は、ホームページ用の写真撮影の費用と頼み方の記事にまとめています。
ステップ3:素材サイトの利用条件を保存する
素材サイトの利用規約は、あとから変わることがあります。購入した時点の条件が、後日確認できなくなると困ります。画像を使うたびに、規約のページを画面保存(PDF化など)して、台帳の証拠欄に保管場所を書きます。
有料素材サイトの料金は、サイトや契約形態によって差があります。1点ごとの購入では数百円〜数千円程度の価格帯が中心のサイトもありますが、実際の料金は各サイトの案内で確認してください。安いからと条件を読まずに使うのが、いちばん危険です。
ステップ4:写真と人物の同意を整える
- 従業員が写る写真は、掲載の目的と範囲を伝え、同意を書面かメールで残す
- お客様が写る写真は、原則として本人の同意をもらう(後ろ姿でも服装などで分かる場合がある)
- 退職した従業員の写真は、掲載の継続を本人に確認する取り決めを決めておく
- 撮影者が社員の場合も、会社が使ってよい旨を社内の文書で確認しておく
- 他社の看板・ロゴ・商品パッケージが主役になる写真は避ける
ステップ5:見直しの習慣をつくる
台帳は、つくって終わりでは役に立ちません。新しい画像を載せるときに必ず一行足す、半年に一度は全体を見直す、の2つだけで十分です。担当者が替わったときの引き継ぎ資料にも、この台帳が役立ちます。引き継ぎ全般の考え方は、Web担当者が辞めたときに社長がやることで整理しています。
| 頻度 | やること | かかる時間の目安 |
|---|---|---|
| 画像を載せるたび | 台帳に1行足す、利用規約を保存する | 1点あたり数分 |
| 半年に1回 | 台帳の見直し、不明の画像の洗い出し | 1〜3時間程度(画像の数による) |
| 担当者の交代時 | 台帳と証拠フォルダの引き継ぎ | 半日程度 |
| 制作会社の変更時 | 画像の出どころ一覧の提出を依頼 | 契約交渉の中で依頼 |
時間の目安は、画像が数十点から数百点の中小企業のホームページを想定した、おおまかな見積もりです。画像の数が多い場合は、重要なページに絞って進めてください。
セクションのまとめ:画像台帳に入手経路・条件・証拠の場所・点検日を残します。不明な画像は目立つ順に整理し、必要なら差し替えます。
制作会社・外注先との契約で確認すること|画像の権利は誰のものか
ホームページを制作会社に作ってもらった場合、納品された画像やデザインの権利が誰にあるのかは、契約の書き方に左右されます。ここは社長が一度は確認したい部分です。
作ってもらったものの著作権は、自動で会社に移らない
制作会社の担当者が作った画像やイラストの著作権は、原則として作った側にあります。会社に権利を移すには、契約で「著作権を譲渡する」と定める必要があります。譲渡する場合でも、著作権法の第61条第2項により、翻案などに関する権利は、契約に特に書かないと譲渡した側に残ると推定されます。
また、作者の人格に関わる権利(著作者人格権)は、譲渡できないとされています(第59条)。実務では、これを行使しないという約束を、契約書に入れる例が多くあります。細かい書き方は、専門家に確認してください。
| 契約書で見る項目 | 確認の観点 |
|---|---|
| 著作権の帰属 | 納品物の著作権が、誰にあるのか。譲渡なのか、利用許諾なのか |
| 利用できる範囲 | 自社のホームページ以外(パンフレット、看板、広告)にも使えるか |
| 素材の第三者権利 | 制作会社が使った写真・イラスト・フォントの権利は、誰が処理するのか |
| 保証と責任 | 第三者の権利を侵害しないことを保証するか。問題が起きたときの対応と費用の負担 |
| 納品物の一覧 | 画像の出どころと使用条件の一覧を、納品時に出してもらえるか |
| 契約終了後 | 契約を終えても、納品された画像を使い続けられるか |
ポイント
ホームページの契約書に「著作権は当社に帰属する」と書かれているものは、少なくありません。解約したあとも画像が使えるのか、必ず契約書で確認しておくのが安全です。
月額型・リース型の契約は特に確認する
月額で制作から運用までを提供するサービスでは、サイトのデザインや画像の権利が提供会社に残る契約もあります。解約するとサイトごと使えなくなる形です。解約時の扱いは、ホームページのリース契約は解約できる?の記事も参考になります。
制作会社を変えるときのひと手間
制作会社を替えるときは、画像の出どころの一覧と、使用条件の証拠を、前の制作会社から受け取っておきます。これを逃すと、あとで請求が来たときに、誰も出どころを説明できなくなります。進め方の全体像は、ホームページの制作会社を変えたいときの進め方に整理しています。
運用を代行会社に任せている場合
更新や保守を運用代行に任せている場合、画像を差し込むのは代行会社の担当者です。代行会社がどこから画像を選ぶのか、素材の購入記録をどう残すのかを、契約の段階で聞いておくと安心です。費用や範囲の考え方は、ホームページ運用代行とは?で解説しています。
セクションのまとめ:納品物の著作権は契約で決まります。画像の出どころ一覧の提出と、解約後の利用条件を、契約書で確かめておきます。
AIを使って画像の点検を楽にする方法|半自動化で担当者の負担を減らす
画像の点検は、地道な作業ですが、AIや無料の道具を使うと手間を減らせます。ただし、最終判断は人が行うという点は変わりません。
AIに任せてよいこと
- ホームページから画像の一覧を取り出す(ページのURLと画像ファイル名の表づくり)
- 台帳の入力欄の整理や、抜けている項目の洗い出し
- 画像検索で、同じ画像が他のサイトで使われていないかの下調べ
- 点検のスケジュール表や、担当者向け手順書のたたき台づくり
人が必ず確認すること
- 利用規約の読み取り(AIの要約を鵜呑みにせず、原文で確認する)
- 「使ってよい」かどうかの最終判断
- 請求への返信文や、法的な判断
- 人物の同意の有無
画像検索(Googleレンズなどの画像で探す機能)を使うと、同じ画像や似た画像がどこで使われているかを調べられます。下調べとして便利ですが、似ているというだけで権利の有無は分かりません。見つかった結果は、あくまで手がかりとして扱ってください。
注意
AIに請求書の画像や相手のメールを貼り付けて相談する場合は、個人名や取引先の情報が外部のサービスに送られる点に注意が必要です。社内の情報の取り扱いルールを確認してから使ってください。
セクションのまとめ:AIは下調べと整理の道具です。利用規約の読み取りと最終判断は、人と専門家が行います。
架空の事例で見る|請求が届いた2つの会社の対応
ここでは、実在しない会社を想定した2つの例を紹介します。流れを具体的に思い浮かべる助けになれば幸いです。登場する会社や人物は、すべて架空です。
事例1:ネットで拾った写真を載せていた従業員40名の金属加工会社(架空)
社長のもとに、ある日、見知らぬ名前の会社からメールが届きました。ホームページの工場紹介ページに載せている写真が、権利者の許可なく使われていると書かれ、請求額と支払期限が添えられていました。社長はすぐ支払おうとしましたが、総務の担当者に「まず内容を確認しましょう」と止められました。
担当者は、メールとページの画面を保存し、写真を載せたのが5年前の前任者だったことを突き止めました。入手経路は分かりませんでした。そこで、これらの資料を持って弁護士に相談しました。弁護士は、相手が権利者かどうかの確認と、請求額の根拠の提示を求める返信を作成しました。
この会社は、その後、ホームページの画像を一覧にして台帳をつくりました。不明な画像は、自社で撮影した写真に差し替えています。結果として、費用はかかりましたが、請求対応の経験が、ホームページの管理を見直す機会になりました。
事例2:制作会社が用意したイラストに問題があった従業員25名の食品販売会社(架空)
通販サイトのリニューアル時に、制作会社が用意したイラストを使っていました。ある日、そのイラストの作者を名乗る人から、使用許可を出した覚えがないという連絡が届きました。社長は制作会社に連絡しましたが、担当者が退職しており、すぐには経緯が分かりませんでした。
契約書を見直すと、第三者の権利を侵害しないことについて、制作会社が責任を持つ条項がありました。社長は、弁護士と相談のうえ、制作会社に事実確認と対応を正式に依頼しました。同時に、問題のイラストは専門家と相談したうえで差し替えました。
この例では、契約書に画像の権利に関する取り決めがあったことが、対応を進める助けになりました。契約の内容によって、使える手段が変わることが分かります。
| 事例 | 最初の動き | うまくいった点 | 残った課題 |
|---|---|---|---|
| 事例1 | 払わずに確認、画面と書面を保存 | 担当者が止めて、専門家へ早く相談できた | 入手経路の記録が5年前から残っていなかった |
| 事例2 | 制作会社と契約書を確認 | 契約に権利の責任条項があった | 担当者の退職で経緯の説明に時間がかかった |
セクションのまとめ:どちらも、まず払わず、記録を保存し、専門家に相談しています。契約書と台帳の有無が、その後の動きやすさを左右します。
よくある質問
画像の著作権と、請求への対応について、社長からよく寄せられる質問をまとめました。
Q. 「フリー素材」と書かれた画像なら、ホームページに自由に使ってよいですか。
自由とは限りません。無料であっても、商用利用の可否、改変の可否、作者名の表示の要否などの条件が付くことが多くあります。使う前に、そのサイトの利用規約を読み、条件を画面保存して台帳に残してください。条件の読み取りに迷う場合は、専門家に確認すると安心です。
Q. 請求書が届きました。画像はすぐ削除したほうがよいですか。
まず画面の記録と元データ、入手経路の資料を保存してから、専門家と相談のうえで非公開にする順番をお勧めします。削除しても過去の使用についての責任がなくなるわけではありません。削除の前後の対応は、弁護士などに確認してください。
Q. 制作会社が用意した画像で請求が来た場合、責任は誰にありますか。
契約の内容や事実関係によって変わるため、一概には言えません。権利者から見れば、掲載している会社が窓口になることが多い一方、制作会社に責任を求められる場合もあります。契約書の保証条項や、画像の出どころの一覧を確認し、専門家に相談してください。
Q. AIで作った画像なら、権利の心配はいりませんか。
心配がなくなるわけではありません。文化庁は「AIと著作権に関する考え方について」で、AIが作った画像でも、既存の著作物に似ていて、それをもとにしたと言える場合には、権利侵害となり得ると整理しています。作成に使った道具や指示文、日付を記録し、特定の作品を思わせる指示は避けてください。
Q. 出典を書いて載せれば、他人の写真も使えますか。
出典を書くだけでは使えるようになりません。著作権法の第32条の「引用」は、公正な慣行に合致し、引用の目的上、正当な範囲内であることが条件です。飾りとして載せる使い方は、引用にあたらないと考えられることが多いため、権利者の許可を得るか、利用条件が明確な素材を使ってください。
Q. 何年も前に載せた画像でも、請求されることはありますか。
あり得ます。損害賠償を求める権利の期間は、民法第724条に、損害と加害者を知ったときから3年、不法行為のときから20年などと定められていますが、起算点などの判断は事案によって異なります。古いから安心とは言えないため、不明な画像は早めに点検することをお勧めします。
あわせて読みたい関連記事
画像の管理は、ホームページ全体の運用の一部です。関連する記事もあわせてご覧ください。
- Webサイト運用とは何か — 運用の業務内容を全体から整理しています。
- ホームページの維持費はいくら? — 運用にかかる費用の内訳と相場を確認できます。
- ホームページを社内の誰に任せるか — 担当者の選び方と社長の関わり方を解説しています。
- ホームページ運用代行とは? — 運用を任せる場合の範囲と費用の目安です。
まとめ:請求が届いたら、払わず・保存し・専門家へ
ホームページの画像の著作権について、請求が届いたときの動き方と、届く前の備えを整理しました。要点は次のとおりです。
- 請求が届いても、すぐ払わず、すぐ返信せず、書面と画面を保存する
- 相手が本物の権利者か、請求の根拠は何かを、落ち着いて確かめる
- 自社の画像の入手経路をたどり、分からない場合は正直に専門家へ伝える
- 最終判断は弁護士などの専門家に相談し、社長は方針を決める
- 届く前に、画像台帳と契約の確認を進めておくと、対応がずっと楽になる
画像の問題は、悪意がなくても起きます。だからこそ、責める前に、仕組みで防ぐ視点が大切です。まずはアクセスの多いページから、画像の点検を始めてみてはいかがでしょうか。
相談の入口
請求への対応や、ホームページの画像の点検について、何から手を付ければよいか迷われたときはご相談ください。状況をうかがい、社内でできること、専門家に任せることを、分かりやすく整理します。法的な最終判断は弁護士などの専門家へつなぐ前提で、ホームページ側の整理をお手伝いします。
先に現状を知りたい場合は、無料診断もご利用いただけます。
この記事の執筆
webcan.jp編集部 主筆 K.Takenouchi。Webディレクター・SEOコンサルタントとして10年以上の現場経験を持ち、大手金融系メディアや医療系コーポレートサイトのコンテンツマーケティング支援、ECサイトの企画運営・KPI設計、月商数百万円から月商1億円規模への成長支援などに携わってきました。
ホームページの管理に迷ったら
ホームページの画像や運用の方向性に迷ったときは、サイトの現状を診断するシンプルな相談窓口を用意しています。費用はかかりません。お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
出典・参考:e-Gov法令検索「著作権法」「民法」、文化庁「著作権」案内ページ、文化庁「AIと著作権に関する考え方について」。条文は改正されることがあるため、最新の内容は各公式サイトでご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。





